何かが足りない。そう思った。
生い茂る緑のいろいろ。草、クローバー、桜の葉。新緑。
あまりにも鮮やかな緑。それらで歩く道の両脇は覆いつくされている。何とも言えない。恐怖とは少し違うけど、何かそっち側の気持ちがじわじわと湧き出る。
ちょこちょことしろつめくさの花の白が混じる。
だが、それだけじゃ足りないと思う。
そうか、桜の色か。
その残像を見ているのかもしれない。この間まではその色の方が多かった。
そしてみんな浮ついていた。
もちろん私も。
色が足りないのか、気持ちが足りないのか。
わからないけど、なんといっても色が欲しい。白いベンチは草で覆いつくされてしまっている。それだけじゃ足りない。
なんてことを思いながら駅までの道を行く。
読み終えた小説の主人公が私と重なった。思考が。重なりすぎて怖かった。
私の物語なんじゃないかと思った。
ページをめくるとちゃんと進んでいく。そしてちゃんと終わりがきた。
違った。私のではなかった。
今日初めてちゃんと面と向かって話した子が面白い表現をする子だった。普通ならそれをそんな風には言わない。言えない。そんな感じ。嬉しいを嬉しいと表現しないような。
その子の発した言葉たちのニュアンス分かるような分からないような。でもわかるような。
心の中の会話ができるような。
あ、なんかこの子素敵だな。好きだな。
何となくだけどそう思った。嬉しかった。
私にできること、求められていること、好きなこと、愛を向けれることなんなんだろう。何かを愛するってどういうことだろう。
ぐるぐるぐるぐる。あっちいったりこっちきたり。
いつか繋がる時がくるのだろうか。
私の中にあるものに気付ける時がくるのだろうか。