「旅屋おかえり」 作者 原田マハ
主人公、売れない女性のタレントが唯一持ってた1本の旅番組を自分の失言により打ちきりにしてしまう。
事務所も主人公ももう後がないところに舞い込んだある偶然。そこから旅屋という、人の代わりに旅をするということが始まる。
主人公にとって旅とは、人それぞれにある旅とは…
旅が色々をもたらすとても前向きな物語。
この本を読んで
やっぱり好きなことで生きていきたいと思った。
好きで自分が楽しんで心がわくわくして優しい気持ちになる。それでいて誰かが救われているような、それで誰かの元気が生まれるような。そんな自分であれたらと思った。
だけどわからない。昔好きだったこと。何でそれが好きだったのだろうか。どうして?そのもの自体が好きだったのかな。それとも褒められたから?
今の自分が心から純粋に好きなことはあるのだろうか。それがちょっとわからない。
この本に主人公と母との約束「決して花開くまでは帰ってきてはならない」が主人公を奮い立たせるのでもあり、胸の滞りでもあるのだけれども。
「私の開花日は、いったい、いつなんだろう。ひょっとすると、もう、花は開かないのかもしれない。」
「つぼみのまんま、しなびて、落ちる。それが私という花の、運命なのかもしれない。」
という言葉が出てくる。
人間だれしもこんなこと思うかもしれない。口でこのような約束を直接的に家族と交わしていなくても、自動的に成功するまで帰れないとか、こんな自分じゃ顔向けできないなんて思わざるを得ないことがある気がする。
私自身、親とそういう約束はしていないし親から何も強要されてきた覚えはないけど、高校で家を出て自分のやりたいことをやってきたからには、何かしらきちんとした自分でないと帰省するのさえすこし心が痛むことがある。今の自分には語れるものがない。近況を聞かれても胸をはって話せる自分ではない。こんな自分で。なんて。その思いがここ何年かずっとあるのだと。だから少し生きにくいのだと。
自分を改めて振り返ることもできた。
その解決策は、自分を受け入れて認めること。自分を奮い立たせること。自己肯定感。自分の長所短所に自分で納得してそれを活かすこと。心から好きなことをすること。
大体こんなところだと頭では分かっている。
主人公はなによりも旅が好きだった。お金になろうとなるまいが旅ができるなら良かった。周りの人にもとても恵まれていた。それはそういう主人公だったからなのかもしれない。
かといって、今の私が周りの人に恵まれていないなんてことはない。むしろ恵まれている。人付き合いが狭く周りにいる人は少ないけれども、みんな素敵な人。それは、ある程度の距離を保った付き合いだからそういえるのかもしれないけど。人は近すぎると色々が見えてくる。自分の中に本当に誰かを置くということはかなり難しいことのように思う。
話がどんどんそれていってしまった気がする。
最終的には私もこんな旅できたらなあと思った。現地の人と触れ合って、文化、言葉、その土地の食べ物、景色、自然…私、こんな旅がしたいんだった。いつもそれとはなんか違って気を落として帰ることが多いけど。そんな前向きな旅が私にもできたらなぁと思った。